2013年1月21日月曜日

クレーン現象、マンド、発語

 前回のシェイピングの投稿に関して、以下のような質問がありました。投稿として回答させていただきますね。ちなみに、知らない人から質問・返答をいただくのは初めてです。ありがとうございまーす。去年12月16日からブログを始めて1月程度ですかね、やっと友達以外の人からも見てもらえるブログになって来たと言う事でしょうか?まさにブログ、インターネットの醍醐味ですね。
 以下が質問の内容です。「どうしても、クレーン表現で、ある程度すんでしまうので、言葉を話す必要性が低いため、遅れてしまった模様です(現在4語程度)。何かしら明確な条件があると楽なんですが。」知らない方に注をつけると、「クレーン表現」とは子供が親等の大人の手をつかんで、欲しい物のところまで連れて行くことです。親の手を道具のように使うことから、「クレーン」と言われます。言葉の発語がない、要求の仕方が分からない子供(大人でもある)によく見られます。質問に答えられているかは分かりませんが、手当たり次第回答しますね。数打ちゃあたるって訳でもありませんが、打たないよりは良いでしょう。
  まず始めに、「クレーン表現で、ある程度すんでしまう」とありますが、そうなんですよ。お母さんはやっぱり母親だから、子供のやりたい事って結構分かってしまうんです。言葉が遅れたのは「お母さんのせい」と言うよりは、母性本能と治療教育とがうまく合致しない特別例という感じですかね。お母さん達には、「絶対何もただではやらないで。」とアドバイスします。というのは、子供の欲しい物をそのまま与えてしまったのでは、教える機会を逃してしまった事になるからです。子供が欲しい物が明らかに分かっていても、分からないふりをして、子供に要求する(専門用語ではマンドと言います)という努力をさせてからその物を与えるようにするんです。例えば、子供が私の手を引っ張っていって、オモチャの所に連れて行くとします。オモチャを見ると、電源がついていないので子供が遊ぼうとしても遊べない状態になっている事が分かります。本来からすれば、子供が私の手を引っ張るよりも、「オモチャが動かないからスイッチ入れて」と口で要求出来れば最善ですよね。ただし、そんなこと突然出来るようになれば苦労はないので、できることから徐々に強化(シェイピング)していきます。ここで選ぶ言葉は、子供が一番言いやすい言葉にします。「オ」の音がもう言える子供だったら、「(スイッチ)オン」でも良いです。結構色々言える子供だったら、「オモチャ動かして」でも良いです。全然言葉が言えない子供なら、まず視線を合わせることから初めても良いです。取りあえず子供が出来そうな事をやらせてから、「オンにして欲しいの?オン、良く言えたね。」とか、「よくお母さんが見れたね。」とか言いながらその直後にオモチャを動かしてあげると良いのです。これを繰り返すうちに、子供も徐々に何か欲しい時は手を引っ張るだけでなく口で何か言ったり、視線を合わせたりするようになってきます。
 選ぶ言葉は、言葉が4語しかない場合はどうしましょう?どんな行動を子供にさせるか選択するのが、実は一番難しいんです。ターゲット(目標)と言いますが、目標を高く設定しすぎると、子供が諦めて興味を失ってしまいやすいんです。目標が低すぎれば当然成長が遅いですが、高すぎるのよりは良いのです。4語発語があるにしても、色んな音を日常的に出している子供の場合、偶然単語に近い音になる場合があるじゃないですか。そう言う場合は比較的やりやすい。とりあえず待っていれば、偶然近い音になった時に強化(上の例を使えば、オモチャをオンにする)すれば良いのです。ただし、実生活を見ると、これが偶然近い音には中々ならないんですよ。子供も(親も)すぐ苛立って来ちゃうし。発語自体が少ない時は、まず偶然に近い音が出るとか、発語がある事自体も稀なので強化しにくい。この場合、手話、絵カード、指差し、ジェスチャー等を使います。指差し等のターゲットの行動ができたら、「良く言えたね。」とオモチャのスイッチを入れてあげます。実際は指差しなので言えてはいないのですが、意思の疎通が出来たという意味です。指差しやジェスチャーは欲しい事がより指定出来るだけ、コミュニケーション・意思疎通という意味ではクレーンよりもずいぶんレベルが高いですよね。
 発語ではなくジェスチャーなどの身体行動をする場合、シェイピングだけではなくて、身体プロンプト(手で子供の行動を作ってあげて手助けすること)が使えます。例えば指差しの場合、クレーンで握っている手をお母さんの手で指差しの形に変えてあげて(身体プロンプト)、それから「良く言えたね。」とオモチャのスイッチを入れてあげるのです。だから、偶然行動が起こる事を待たなくても良いのです。ただし、身体プロンプトの難点としては、子供によってはお母さんのプロンプトを受動的に待ってしまう子供もいます。ですから、自発性を教えなければいけません。まず子供がお母さんのプロンプトを期待する(手を差し出す)ようになってきたら、プロンプトをする前に、3秒間待ってやるんです。子供に、「あれ?」と考える時間を与えるんです。3秒待ったら、プロンプとしてしまって構いません。もちろんお母さんを待たずに自分で指差しできたら、それだけ早く子供の欲しい物が手に入るようにします。それをしばらく続けたら、5秒にします。徐々に時間を延ばす事で、子供が自発的に指差しをする方が子供に取って得(早くもらえる)になるので、自発性を増やす事ができます。どうして発語とシェイピングの話が、ジェスチャーと身体プロンプトの話になったかというと、それだけシェイピングが難しいということです。治療教育を始めて1−2年ではまず習得は無理でしょう。しかし、シェイピングを使えなくても、子供の意思疎通の力を次のレベルに持って行くことができるということです。
 お母さん達からたまに、「ジェスチャー、絵カード、手話などのを使うって言う事は、発語を諦めたことになるんじゃないの?」という質問を受けます。実は、その逆なんです。絵カード(この場合ペックスという絵カードを使った意思疎通法)を使って要求する事を教えると、教えていない発音全般(声を出す事)が増えたという研究も出ています。意外でしょ?声を出すようになれば、それだけ強化できる機会が増えるということです。発語だけにとらわれず、意思の疎通を出来るだけ教えることで、発語を含めた意思疎通につなげて行きましょう。ちなみに、お母さんの指差す方向を見る、お母さんのやることを真似するという事を教えても、次に色々な行動が教えやすくなります。
 もうちょっと突っ込んでシェイピングだけを使って発語を教えたい場合、こういう事もできます。おやつに食べる事の好きな子供なら、色んな食べ物を用意しておきます。色々食べ物があることで、ターゲットとなる言葉の数を増やせます。例えば、チョコレート、イチゴ、バナナ、ジュース、ポテトチップスがある場合、子供が声を出してチョコレートの「チョ」や「ト」に近い音、イチゴの「い」とか「ご」に近い音、バナナの「バ」や「ナ」に近い音、ポテトの「ポ」に近い音、「(袋を)開ける」の「あ」に近い音など、「もっと欲しい」の「も」の音など、どれでも近い音が出た瞬間に、「い、いちごが食べたいね。」「も、もっと欲しい」と等と言いながら子供の口の中に関連した食べ物を放り入れます。こうやって食べ物の種類を増やす事で色んな音が強化出来るようになるので、声を出す事自体が断然増やせます。オモチャの例でいけば、「オン」の他にも、「動かして」「やって」「欲しい」「これ」など、ターゲットをたくさん用意しておけば、偶然どれかに近い音が出る確率はあがりますよね。ちなみに「食べ物を口に放り入れる」と言いましたが、子供の発音が次の発音に移ってしまわないうちに強化してしまわなければ行けないからです。言葉が話せない子供が発音している時って、「イーアーエー」とかって、色んな音をだしますよね。一音だけではない。だから、その瞬間を逃さないということが必要になります。この瞬間的な強化ができないと、言葉に近い音にはなっていかないのです。ちなみに、声を出す事を教えると、残念ながら、「うるさくなった」と言われます。これは仕方のない事です。親側のわがままという事ですね。
 色々話しましたが、質問に答えられたら幸いです。

2 件のコメント:

  1. 先日、講演を拝見しました。
    貴重な話をありがとうございました。

    お聞きしたいのですがPECSを使って指導していない発音全般が改善されたという研究は何というタイトルの論文でしょうか。

    私自身はマンド場面で単音模倣等、現段階できていることを必ず要求することで言語スキルを伸ばしていますが、VB等を見ると先にジェスチャーや絵カードでダイレクトにマンドができるようにしていくという方法も有効であると感じます。

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  2. セミナーに参加して頂いて、ありがとうございました。
    引用文献は以下になります。
    Charlop-Christy, M.H., Carpenter, M., Le, L., LeBlanc, L.A., & Kellet K. (2002). Using the Picture Exchange Communication System (PECS) with Children with Autism: Assessment of PECS Acquisition, Peech, Social-Communicative Behavior, and Problem Behavior. Journal of Applied Behavior Analysis, 35(3), 213-231.
    私もスピーチはPECSを含めて(に限らず)マンド場面が一番伸びると思います。

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