2013年1月17日木曜日

ABA:シェイピング

 治療教育でよく使われる応用行動分析(ABA)の中に、シェイピングという手法があります。これは教えたい行動が今起こっていない時、それに近い行動を増やし、徐々に最終目的の行動に近づけるというものです。例えば、サーカスの熊や象に行動を教える時、口で説明してもダメですよね。基本的に良い行動が起こった時に、えさを与えてその行動を強化します。でも、今起こっていない行動をどうやって教えれば良いのか。それに近い行動に徐々に変えていくんです。例えば熊にぐるりと回る事を教えるには、最初はちょっと横を向いた時にえさ強化子(好子)を与える、それが出来るようになれば、もう少しだけ前より横を向いた時にだけえさを与える、さらに、後ろまで向いたときだけえさを与える、と徐々に徐々にぐるりと回ってしまうまで続けるわけです。
 行動分析の創始者とも言われるスキナーは、水やえさなどの好子・強化子を使って動物に色々な行動を教えました。鳩にピンポンをするように教えたり、戦争中には鳩に目標に向かってつっつく行動を教える事で、ホーミングミサイル(目標追跡型のミサイル)の中身に鳩を使うということも提案していました(実用化はされませんでしたが)。
 もちろん人間にも(大人にも子供にも、健常児でも自閉症児でも)使えるこの手法ですが、実は手法の習得が難しいんです。0.1秒強化子(好子)を与えるのが遅れるだけで、どの行動を強化したのかずれてしまうのですから、下手な人がやると必要のない行動が増えてしまって、一向に望む行動まで行き着かない。時間もかかります。ただし言葉を教える際は、どうしても無理に言葉を絞り出させる事ができないので、シェイピングを使わざるを得ないことが多いのです。例えば何も言葉を話さない子供が、何でも良いから音を出した時には褒めてやったり、遊んでやったり、おやつをあげたりして強化するんです。偶然でも音が出るようになったら、すぐに強化するんです。音をたくさん出すようになると、それを徐々に、単なる音ではなくて言葉に近づけていく訳です。時間も、忍耐力も、シェイピングの技術力(強化子を与えるタイミングの良さ)もいります。
 治療教育には本当にこういう高レベルの技術を使える専門家がいると良いのですが、アメリカでもなかなかみつかりません。私も人の監督に回ることが多く、実際に子供の教育することが減っているので、大した事ないでしょう。ちなみに、カリフォルニアで今監督しているセラピストさんの一人は、行動分析の正式なトレーニングを受けていないにも関わらず、これが本当に上手いんです。自閉症の子供で、1年間他の治療教育の機関で治療教育を受けて来たにも関わらず、言葉はほとんどなしの子供がいました。3歳でそのセラピストさんの所に来ました。そのセラピストさんと治療教育を始めて3ヶ月くらいですかね、そのセラピストさんといる時は明らかに音をたくさん出すようになりました。しかも、よーく聞くと、「もっと(more)」とか、 「もう一回(again)」とか、 「食べる(eat)」とか、 「ナナ(バナナ)」とか、言葉に近い音がたくさん出てるんです。徐々にシェイピングされています。今6ヶ月くらいで、「緑(green)」とか「(バ)ナナ食べる(eat nana)」とか、もっともっと色んな音が明らかに正しい場面で出てくるようになっています。残念ながらこちらが思った時ににいつも言葉を話す訳ではないのですが、一時間で40から50くらいの発語が見られるようにまでなっています。他の治療教育の専門家が1年かかってほとんど成長がなかった子供に、これだけ教えられるようになるのは、本当に腕というか技術のある人にしかできない。感心しました。治療教育の腕が本当に良い専門家が増えると良いですね。

2 件のコメント:

  1. 北海道の関と申します。
    家の子も4歳で、やっと4語ほど出る様になりました。
    どうしても、クレーン表現で、ある程度すんでしまうので、言葉を話す必要性が低いため、遅れてしまった模様です。
    何かしら明確な条件があると楽なんですが。

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  2. 質問・コメントありがとうございました。他の皆様も知りたい内容かもと思いましたので、次の「クレーン、マンド、発語」という投稿という形で回答をさせていただきましたので、良ければ読んでください。こうじ

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