2013年2月25日月曜日

ABAペアリング:価値を変える

 先日名古屋のアメリカ領事館に行ってきました。領事館のイメージとしては、何となく大々的に「領事館」とかって看板とかあって、「私の国を知ってください。」「色んな人いらっしゃい」という雰囲気で、アメリカ人とか日本人が大勢行き来している市役所のアメリカバージョンいたいなのを想像していました。全然違いましたね。ビルの中の小さな入り口で、知らなければ絶対通り過ぎてしまう。警備員がいて、何のために来たのかを説明しなければドアの近くにも寄れない。ドアは鍵がかかっていて(営業時間中でも)、インターフォンで中の人にもう一度理由を説明して初めて入れてもらえる。それから、飛行場のセキュリティーみたいなのをくぐって、荷物を検査されるんです。
 セキュリティーを通りながら、ふと壁を見るとオバマ大統領、バイデン副大統領、ヒラリークリントンの写真が並んでいて、「ここは日本国内でも、アメリカの領土なんだ」、とつぶやきました。するとセキュリティーのおじさんが、「そう、そこのドアからこちらは、ユー、エス、エー!」と興奮気味に答えてくれました。このおじさん面白いでしょ?ユーモアというか、いい味出してる。ちなみに用事は全部日本語ですみました。「ユー、エス、エー!」って、微笑んでしまいますよね。
 ユーモアのセンスって人それぞれだけれど、自閉症に教えることは難しい。というか、面白いと感じるか、感じないかはそれぞれの価値観なので、教えられるものではないのです。ABAにおいて価値観をかえるには、ペアリングというのを使います。簡単に言えば、「ペア」って「一対」ってことです。「好き」な物と「普通」の物を何度も(何百回、何千回)一緒に(対にして)提示することで、徐々に「普通」の物が「好き」になるのです。例えば、赤ちゃんが徐々にお母さんの姿、声、肌触り、においなどを識別し、(他人より)お母さんの方に近づこうとするのは、お母さんの姿や声などが「ミルクをもらえる」「暖かくしてくれる」「おむつを交換して清潔にしてくれる」「守ってくれる」といった、赤ちゃんに取って「好き」なことと何百回も何千回も結びつく(ペアリング)ためと言われます。ちなみにペアリングの効果は(普通の物が好きになる)、すぐに起こる事もあれば、残念ながら何百回しても起こらない事もあるんです。ですが、私は療育(治療教育)上大変重要な手法として使います。特に早期教育というか、子どもがまだまだ価値観などが定まっていないうちは、「ダメもと」でどんどんやります。
 自閉症の場合、「好き」「嫌い」の価値観が少し違う場合が多いのです。例えば「よく出来たね」と褒めてもらうことが、全然「好き」でなければ、教育上大変教えるのが難しくなります。褒められるとうれしくて舞い上がって褒められた事を何度も繰り返してしまう子もいますよね。自閉症の子の中には、褒められても無表情のままその場を離れてしまったりすることもあります。「親の嬉しそうな顔」にも視線が合わない子どもも多いです。逆に、親が嫌そうな表情をしても全然無視する子どもも多いです。ですから、親の嬉しそうな顔、褒め言葉などと、子どもの好きなもの(遊び、お菓子など)を一日何度も一緒に提示する(ペアリング)ことで、その価値観を変えて行こうとするのです。
 表情、褒め言葉の他にも、価値を上げたいことがあります。「同一の物を一緒にする(マッチング)」、「人の動作を模倣すること(動作と動作のマッチング)」、などです。前にも「模倣」の投稿で話しましたが、一般に人は思ったよりも人の真似をして生活している。例えば、人が行列をつくると、つい行列の先に何があるのかも知らずに並んでしまう人がいます。(ペアリングされた結果というか、過去に模倣して楽しい結果となった経験があって)模倣自体が面白くなっていたため、そういった行動を取るのだと思います。普通の子どもを見てると、ライオンとライオンを一緒に、牛は牛と一緒になど、色々同じ物を一緒にして遊んでいたりする事もあります。その場合「同じ」ということは、子どもにとって面白いんです。さらに言うと、ミスマッチ(上手く合わない物、反対のもの)も面白いんです。ユーモアの一種にもなると思います。テレビで有名な「ハリセンボン」の近藤春菜さんのギャグで、「○○じゃねーよ。」ってありますよね。あれも「似てる(マッチング)」というのと、「でもそんな人に似ていると言ったら失礼かも(状況からするとミスマッチ)」と合わせているから、面白いかなあと思います。
 私がアメリカで教えてい子どもで、マッチングが徐々に面白いという事がわかるようになって来た子どもがいました。療育前は、他の子どもなんか見向きもしなかったのに、早期教育の結果、他の子どもを真似するのが好きになってしまいました。しょっちゅう真似をしています。そのうち、こんな事を言い始めました。「青信号走れ。赤信号停まれ。」という風にお父さんと言葉遊びをしていたら、「赤信号走れ。青信号停まれ。」って自分でわざと間違えて言って(ミスマッチを作って)、自分で笑うんです。これって、ユーモアの目覚め?と療育している側が嬉しくなってしまう瞬間ですよね。 「赤じゃ走らねーよ。」とかって「突っ込み」まで教えれば良かった。でも、英語で「突っ込み」ってないよね。

0 件のコメント:

コメントを投稿