要求の仕方

 今日私の今年米寿になった祖父の入院している病院に行きました。胃がん手術後にちょっと無理をしたために、肺炎になって再度入院してしまった祖父ですが、病院のお医者さんの先生と、退院について話をしました。実はお医者さんの先生は退院を勧めるどころか、まだ安心という所まで行っていないので、あと3−4日は病院に残って様子を見たいと言っていたのですが、実は本人が昨日の夜から泣いて先生にお願いしたらしいんですよね。「妻の介護がしたいから」、と泣きついたらしいんです。それを予想していた私も、本当はお医者さんの先生に安心して退院出来るまで病院に残るように言ってもらおうと思っていたんです。本人にも「人の世話を見ている場合ではない」と言っているのですが、私にも泣いてるんです。私もつられて泣いてしまって、どうしても強く言えなくて退院させてしまいました。言って見れば、おじいちゃんの「泣き」にまんまとやられた訳ですが、年齢によってそれぞれの要求の仕方ってありますね。人間本当にやりたいと工夫をして要求すれば、結構は要求は通るのかな、なんて思います。
 自閉症の人やアスペルガーの人って、本当にこの要求が下手なんです。というか、自分自身もそれに気づけない事も多いんです。例えば、腹が減ってくると、イライラしてきますよね。でも腹が減ってきたことに気づかない人って見た事ありません?特に家族とか気が許せる人にそういうイライラが見える。本人は色々やることが多くて食べてる時間を逃してしまっているとか、腹は減っているけれど食べたい物が見つからないとか、その程度の理由なんですが、家族から見るとただイライラだけが目立つので、はっきり言って本当に迷惑します。自分の血糖値ぐらい自分で管理しろっての。自閉症やアスペルガーの人ってしたい事が口でなかなか説明出来なかったり、その重要性がなかなか伝えられなかったり(周りから見れば大したことのない物が本人には重要だったりするんです)、時には欲しいということ自体に気づけなかったりするんです。でも、欲しい物が手に入らなければフラストレーションがたまるので、他に支障がでますよね。いらだったり、他に当たったり、泣いたり。親や家族はそいうった人に対して、イライラされると迷惑なので、そうならないように回避して(お腹が減ってそうな頃におやつを出すとか)生活するように逆に学んでしまい、本人の自己管理とか、ちゃんと口に出して説明して要求するとか、そういったことが学べないまま成長してしまう事も多いんです。
 要求って、人を通して自分の欲しい物を得るということですから、本当に大事なことです。これが上手い人は政治家だったり、弁護士だったりして成功する事もあるでしょう。これを家庭でどう毎日教えていくか、が自閉症やアスペルガーの治療教育の基本になります。私がコンサルをする際は、「チクチクと地味にいじめるように」と説明します。本人が欲しいなと思う事を、あえて本人が口に出して要求するまで与えなかったり、本人のこだわりを利用して、あえてこだわりに反するようなことをするんです。本当に嫌なことをしてしまうと、本人がパニックになりすぎて教えられなくなるので、それほど嫌ではないけれど、ちょっと嫌という事をするんです。例えば、本人が「この服を着た時は、必ずこの帽子」というようなこだわりがあるとすると、服を出して帽子をちょっと隠しておいたりするんです。まあ言葉が上手な子供であれば、知っていながら、「ええ、どうして?帽子なしの方が可愛いじゃん」なんて言って、どうして帽子が必要なのか、どう重大なのかを本人に冷静に説明させるんです。例えば、「この紫の服と黄色の帽子を来た時に楽しい事があって、ラッキーな組み合わせだから」とか、「この色合いの組み合わせが本当に好き」とか。気持ちを伝えるってことを教えるんです。「こんな事したいだろうな」と思ったら、絶対「ただ」では与えてはいけません。何か説明させたり、仕事をさせたりさせて良いんです。毎日の積み重ねで、要求の仕方、気持ちの伝え方はずいぶん改善出来ます。ぜひ試してください。

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