自閉症の治癒、回復について。その1

 皆さんの関心のありそうな話題からしますね。これは、私のホームページ(上のリンク自閉症相談室)でも触れた話題ですが、もう少し掘り下げたいと思います。
 自閉症って、早期(1−3歳程度までに)に療育を始める事によって、「治癒」とか「回復」とかするんでしょうか?まず自閉症って、一生の障害だということが言われます。教科書的にはそうですよね。でも、ABAを使った療育(ABA、療育について詳しくは自閉症相談室のページをご覧下さい)を行うことで、治るん人もいるんじゃないですか?自叙伝である「わが子よ、声を聞かせて」(Catherine Marice著、山村宜子翻訳)なども、その例じゃないの?80年代にあった、ABAで最も有名なあのUCLAのロバース博士の論文では、19人のうち半分に近い子供が健常児と普通学級に通って、他の子供と見分けがつかないという状態になったというじゃないですか。これって、矛盾していません?治る(なおる)の?治らないの?そう思いませんか?
 療育の本場であるアメリカの療育の現場でも「治癒」とか「治る」という言葉(英語で言うと「cure」にあたる)はほとんど使われていません。これは、この言葉を使うと「病気や傷などが完全に治る」という意味になり、障害の原因さえわかっていないため原因が取り除けない自閉症に使う事自体が疑問視されるからだと思います。上の文章でロバース博士の論文の所では、「健常児と普通学級に通って、他の子供と見分けがつかない」と回りくどい表現をしていますが、自閉的な行動傾向が完全になくなったということではありません。自分の好きな話題だけを繰り返してしまったり、小さなことでパニックになりやすかったり、といった症状が続く場合もあります。なんとなく「変わった人」という印象を与えるかもしれません。ですから「普通になった」とか、「自閉症がなくなった」とは言えないのです。だから、「治る」、「直る」、「治癒する」とは言えないんです。
 それに対して、「回復(recovery)」という言葉は使われる療育の専門家の方もいます。例えば、カリフォルニアでABAの学会に出た時に、積極的に「回復(recovery)」という言葉を使おうと、学会で発表等している療育の専門家もいました。ここで言う「回復」とは、「自閉症的な問題が小さくなって、普通学級に特別な支援なし、もしくは小さな支援のみ必要で、専門家でない人から見ても人間問題で大きく目立つこともなく、知的な遅れや言語の遅れもほとんど見られない」という意味です。まあ、平たく言えば、「変な人ながらある程度の社会や学校への適応をできる」とでも言いましょうか。その専門家の発表では、それぞれ療育の会社で多かれ少なかれ必ずそういうケースはあるはずで、それが何パーセントか、療育の技術向上でどれだけその割合が上げられるかということを、もっと公開して議論していこうと言っていました。
 私の「回復」という言葉にまつわる療育経験について、その2に続きます。

コメント

このブログの人気の投稿

自閉スペクトラム症と運動

スモール・ステップで勝ち負け、「負けて悔しい」を教える

第3回オンラインABA講座「そんたく」