学習障害、学校教育への疑問はどうするの?

 実は昨年のクリスマス頃、名古屋市の教育委員会の方と懇談会を持つ機会がありました。教育委員会のお偉い方々とミーティングができるなんて、一体どんなことかと申しますと、きっかけは、名古屋市議会に提出された保護者からの手紙でした。読み書きなど特定の分野において困難を示す学習障害は、一般に通常の知能を持ち、会話にも社交面にも問題がありません。俳優のトムクルーズが読むことができなくて学校をやめたと告白したことでも有名でしたね。今やクラスに何人かいてもおかしくない状態。ただしその生徒さんの場合は、障害の発見も遅れ、支援級に行ったり、普通級に戻ったり、その中で学校の問題点、例えば適切な合理的配慮が遅れたこと、個別支援計画がシェアされていなかったこと、支援級で必要なカリキュラムが教えられていなかったことなど、様々な困難に悩まされました。この手紙を受けて、教育委員会のトップである教育長が議会で謝罪するという大きな事件が起こったわけです。

 これを受けて、議員さんのお力添えを受けて、当事者の方と、親の会の方、私のような支援事業を営む者も交えて、小さな懇談会が開かれました。議員さんから、今回は話を聞いてもらうだけで、返答はまだもらえませんよ、とのこと。良いです、良いです。こんな懇談会が得られるなんて、またとない機会ですし、返答は後ででも。そのようにして開かれた懇談会では、特に当事者本人からの言葉が皆の胸を打ちました。発見が遅れたことについて、どうして読めないってお母さんに言えなかったの?と質問されて「馬鹿だと思っていたから」との返答。将来は何になりたい?と質問されて「将来は特別支援級の先生になりたい」との返答。こんな率直な受け答えができる利発な子が、どうして馬鹿なことがあるかと、きっと将来は先生になれるよと、参加者皆が涙ぐんだ瞬間でした。

 数ヶ月後、保護者が回答について教育委員会に打診すると、「回答するつもりはありません」とのこと。どう言うことでしょう?さらに「もし回答するにしても特に進展はないので、あまり意味のないものになります。それでもよろしければ議員より連絡をいただきたい」との返答を受けたそうです。特に進展はないとは、どう言うことでしょう?もちろん回答は必要ですと議員さんを通して回答を要求してもらいました。その内容を大雑把に言うと、現在既に行われている教育システムを説明するだけでした。つまり教育委員会は、現在すでに適切な教育が行われているとの認識だと言うことです。びっくりです。当事者も参加して、学校教育に何か問題点があって苦労している人がいるからと、説明しましたよね?国語の問題じゃないですが、逆に、この流れで教育に問題、なかったですか?と質問したい。保護者と当事者の気持ち、聞きました?そしてこのような苦労をもう他の誰にもして欲しくないから、そう言うことが起こりにくい学校のシステムになるように、少しでも学校教育を改善して欲しいと言う保護者の願いは?結果として懇談会での保護者と親の会の切なる願いは、学校教育という大きな城に、全く届きませんでした。驚くほど冷たく突き放された手紙に、当事者本人は「何も変わらないね」との反応だったとのこと・・・ああ、何てことでしょう?こんな素直な良い子に、見せてはいけない大人の世界を見せてしまった。教育委員会との懇談会で、少しでも学校教育の改善につながれば、と淡い期待を抱いていた私が甘かったか。

 もちろん親の会や、打たれてもしぶとい私などは、このようなことで泣き寝入りすることはないです。次の手はまだ見つかりませんが。でも、他の親はどうでしょう?親は、子どもの教育で納得いかないことがあった場合、どうすれば良いのでしょうか?議員さんの力を借りて、教育委員会と懇談会をするまでしても、この結果です。もしかしたら、教育委員会というところは、何かを改善させることの手助けできる部署では最初からないのかもしれません。教育システムそのものの勉強から始めろということなのでしょうか?教育大学の授業を担当している私ですが、そもそも教育を分かっていないということかもしれません。

 もちろん現在の学校教育が必ずしも悪いとは、私はそもそも思っていません。素晴らしい先生がたくさんいるのを知っています。ただ今の学校教育では、その素晴らしい先生たるための、先生へのサポートが、あまりに少ない。余裕やサポートのない教育現場では、生徒が最低限法律で守られるべき権利、例えば個別の教育支援計画の作成と実施なども、守られないケースが頻繁に起こり得る。そしてそれをチェックするチェック機能や、何か問題が起こった時にそれを修正するシステムが存在しない。学校に通う時間は本当に長い。本当に良い結果を生むだけの時間と力が学校教育にあると信じたい。教育は大切なのです。当事者から見れば人生が左右されるのですから、「全体には良いから問題がない」は当事者から見たら、大問題なのです。

 皆様意見をお待ちしております。次はどんな手で学校のシステムを改善させるに至るのか?親の会や保護者の皆様と共に、今後も活動を続けていきます。

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