ABA: Momentum勢いに乗る

 先日おじいちゃんと花見に行ってきました。お昼に名古屋地方では有名なCoco一番のカレーを食べました。「ここに来るときはいつもこれ。」と言うので、皆でヒレカツカレーを頼みました。おじいちゃん夫婦を見たお店の人から、「ごはん多いですけれど、良いですか?」と聞かれましたが、「ええ。」と自信満々に答えていたので、そのまま普通どおりを注文しました。ヒレカツが2枚ものっていて、サラダまで頼んだ私はお店の人の言う通り、ごはん全部食べきれませんでしたが、おじいちゃんは完食してました。去年の11月に胃がんの手術で3分の2切除したばかりの88才とは思えない。しかし車に乗って花見に向かうと、突然喋らなくなりました。単純に食べ過ぎで苦しかったんですね。食い過ぎてしまったおじいちゃんは公園についても階段で座って、じっとしたまま動けなくなってしまいました。やはり3分の1残っていない胃で、あのカレーとかつの量は無理かな。一人でぽつんと座り込む姿に哀愁が漂う。反省タイム?ちょっと一人でそっとしておいてあげたんですが、突然いなくなっているのでどうしたのかと思えば、公衆便所で戻していたそうです。「すっきりした。」とゲンキ満々で戻ってきました。反省しただろうか?いや、してないな。これからもきっと食べ過ぎを続けるに違いない。
 手術後私に車を譲り運転も諦めてしまっていたため、ちょくちょく外に連れて出かけるようにしているのですが、最初のうちは「いつでもええ。」「何にもいらん。」とかって遠慮して、私の誘いも結構断っていたんですよね。でも出かけ出したら結構連れて行ってもらうことが楽になったみたい。最近は勢いがついちゃって向こうから電話結構かかってくる。毎週のように出かけるのを楽しみにするようになっています。「毎週というのもつらいかも・・・」とも思うけれど、まあアメリカにいてずっと会ってなかったし、連れて行けるうちは連れて行こうかと考えています。
  行動全般についても言えることですが、勢いにのるということが大切です。Behavioral Momentumっていう専門用語もあるくらいです。意外かもしれませんが、研究によってその効果も証明されている。どういうことかと言うと、起こりづらい行動があるとすれば、起こりやすい行動を何度か起こしてその合間合間に起こりづらい行動を挟むことにします。例えば、数字の課題が難しいとするじゃないですか。数字の課題を見ただけでも「ええー。やりたくない。」と嫌悪反応が起こる。それに対してひらがなの課題は比較的簡単に出来るとします。そうすると、ひらがなの課題をいくつかやって、「できたー。えらい!」とかって褒めながら、その合間合間にこっそり数字の課題を1課題だけ混ぜちゃうんです。「これから数字をやるぞ!」って力入れて繰り返しやるんじゃなくて、ひらがなをやってたと思ったら知らないうちに数字がちょっとだけ混ざってた状態にするのです。こうすることで、「ええー。やだー。やりたくなーい。」から、「あれ?数字の課題なんかやったっけ?」という事になる。
 自閉症の療育ではディスクリートトライアルをやる時なんかは、これをよく使いますね。普通だったら特に嫌がらずに課題をする子どもでも、新米のセラピストにまかしておいてちょっと目を離すと、子どもがべとっと床に寝ちゃってしまったりして全然やる気無し。新米セラピストに「どうしたら良いんでしょうか?」なんて質問されますが、こっちも、「どうやったら子どもをそんな状態にできたんだろう?」と不思議に思います。こういう時はMomentumを使います、というか勢いにのせます。子どものやりたいことや、本当に簡単にできることから徐々に導入して、できたらすっごい褒めてやる。これでやる気なしから、「おっ、勉強楽しいかも?」と思ってもらうわけです。やっぱり成功体験は強いですよ。簡単な課題や好きなことが指示を出してできるようになったら、様子を見ながら徐々に難しい課題も挿入する。押せれば押すし、その日やその時は押せなさそうなら、押さない。この「様子を見ながら押しつ押されつ」というところが、経験で学ぶしかないかな。

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