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渡米日記2

 アメリカ到着後、結局どこにも動けずに24時間寝続けてしまいました。朝ごはん付きのホテルで良かった。オムレツや目玉焼きをオーダーすると、その場で作ってくれるんですよね。「ええ・・と、玉ねぎに、ベーコンに、チーズに、トマトに、ほうれん草に、マッシュルームに・・・。それからポテトとソーセージも。」アメリカにいた時でも普段からこんなにバカでかいオムレツを毎日食べていたわけではないが。ああ、久しぶりのアメリカっぽい。ちょっと良い目のホテルにしておいて良かった。  体はまだ全快ではないけれど、昔お世話になった先生と予定通り夕飯を一緒にすることにしました。その先生は当時も私の勤める学校区のディレクター(日本で言えば、地方の教育委員会の長とかに近いかな?)をやっていて、親からもかなり信頼のあった敏腕な方なんです。地下鉄を降りたら、何だかオシャレなレストランや町並みが並ぶ。カリフォルニアのOaklandって知ってます?全米でも屈指の治安の悪い街なのですが、でもその治安の悪い同じ市の中で、オシャレで高級なところも混在するんです。不思議ですよね。ここでは何だかオシャレな人たちが歩道を歩き回り、治安の危険さはまず感じられない。地下鉄の駅のすぐ近く、子連れでも大丈夫そうなカジュアルなお店に入り、メキシカン(メキシコ料理)を。ああ、やはりカリフォルニアに行ったら、メキシカンだよねえ。日本では食べられないからねえ。ブリトーだよねえ、サルサだよねえ・・・うまい。体調が良ければもっと良かった。  今先生が働いていらっしゃる小さな学校区はサンフランシスコ空港の近くらしく、面白いことに、なぜか自閉症があまり目立たず、大きな問題ではないらしいんです。ええ?自閉症が別に目立たない?ちなみにアメリカの教育会でもやはり自閉症は大きな問題で、どうしても普通の教え方では中々スキルが上達していかない子どもや、問題行動を起こしてしまう子ども多く、この教えづらさから、親と学校とも「何が適切な教育なのか?」を巡って対立してしまうこともつながったり、中には法廷での戦いにまでもつれ込むことも多いのです。ちなみにこの先生と私は昔の戦友というか、親側と学校側が対立する一番難しいケースに私たちが出動して、その対立を何時間にも渡る話し合いで合意に持っていくようなことが何度もありました。メチャクチャ大変でしたが、今となれば懐かしい...

渡米日記1

 アメリカに久々に行ってきました。おかげさまで最近生徒さんの数も増え、普段どうしても仕事中心の生活になってしまうことが多く、今回の旅は仕事をほんの少しにして、昔の友人にあったり、美味しいものを食べたり、なるべくリラックスした旅を計画しました。飛行機に乗ったら、まだ1歳にもなっていない息子はご飯を食べてすぐに簡易ベッドで眠り、こちらもワインなど飲んでくつろいで、「はあ」と落ち着いた瞬間に調子が悪くなりました。寒くって震えが止まらないんです。休みになってリラックスすると、いきなり体調を崩すときってありません?年取ってくると、段々リラックスが難しくなって、やっぱり休みでも何だかバタバタ動いてしまうこともあったかなあ。最近休みはしっかりと取っていたつもりだったのに、ああ、アメリカ旅行までして初めてリラックスするって、何だかねえ。とほほ。折角の旅行が・・・。結局ブルブル震えながらあまりぐっすり眠れるわけでもなく、げっそりしながらアメリカに到着。入国審査では、「You, go there!」みたいな無礼な命令をされつつ、理由も告げられないままやっぱり無駄に何十分も引きとめられて、ますますげっそりしながら到着ロビーに着きました。  空港でちょっと動けないので、少しお昼ご飯でも食べてからにしようかと、家内がサンドイッチでも買ってくると、「こ、この量は!」久々のアメリカン・サイズ。そういえば、こんな量が当たり前だったっけ・・・。サンドイッチ二つとスープだけなのに、フライドポテトは山のようについているし、スープは丼ぶりかと思う大きさで、ご飯出されるだけ食べたら、体を壊すんだよね・・・。久しぶりに食べ物を残して捨ててきてしまいました。  本当はレンタカーでそのままホテルに向かうはずであったのだけれど、あまりにげっそりしている旦那を見て、家内がレンタカーをキャンセルして、そのまま地下鉄で移動することにしました。赤ちゃんと病人連れて、家内も本当に大変だねえと思いつつも、体は動かず。しかしサンフランシスコの空港は本当に地下鉄が便利で、下手に怖そうなタクシー運ちゃんとやり取りして、いくら取られるのかドキドキしながらタクシーに乗るより、そのまま地下鉄一本でホテルまで到着できてしまうのでした。地下鉄の乗り降りは、さすが障害者にも優しいアメリカというか、地下鉄の車両とホームとの段差が非常に小さく...

ソーシャル・スキル・トレーニング

 6月19日(日曜日)に東京の中目黒で、第4回講演会を「ソーシャル・スキル・トレーニング」題材に行います。興味のある方はぜひご参加ください。(詳しくはwww.kojitakeshima.comまで。)  ソーシャル・スキル・トレーニングは、本当に難しい題材の一つです。私もソーシャルスキルに関する本や研究はたくさん読みましたが、「この教科書を読めば、ソーシャルスキルがわかる」「段階別に分類されて、非常にわかりやすい」というような代表作的な本が私も見つけられないからです。私も実際に療育を行う際は、いろんな本や研究のいろんな部分をつなぎ合わせて行っている次第で、私自身の臨床経験に頼る部分も大きいのです。今回講演会に題材として取り上げることで、「ソーシャル・スキル・トレーニングを、私ならこう分析して、こうやって行うという」という実際のところを共有し、実際にお子様を療育をされている皆様に、ヒント・手助けになることを伝えられれば良いと考えています。  私の一番のテーマは、「実際に使えるレベルにまでスキルを持っていけるか?」ということです。というのも、いろんな子がスキルが使えるのだけれど使わない(can't do ではなくwon't do)というか、「やれるけど、やらない」という場合が多いのです。例えば視線合わせのスキルをとっても、自分が視線を合わせたいときはがっつり見られるのに、大人が話しかけるときは目をそらせるとか、よくありますよね。視線が合わせられないのではなく、視線を合わせる動機や、視線を合わせを強化する好子・強化子が自然の生活の中にないのです。視線合わせという行動だけを見るのではなく、その機能というか「どうやったら、人と視線を合わせたくなるのか?」への分析が大切になるのです。  スキルに対する動機の部分の分析は、よく見られるソーシャル・スキル・トレーニングでも弱い場合が多いです。例えば、ゲームに負けて泣き叫ぶ子どもに、「負けても泣き叫んで癇癪を起こさない(泣かずにゲームを遂行する)こと」を教える場合があるのですが、まず第一に、負けたぐらいでどうしてそこまで泣き叫ばなければいけないのでしょう?と私は考えます。ソーシャル・トレーニングの結果、その子どもの様子を見たときに、「泣かずにゲームを遂行する」という同じ行動をしていたとしても、「泣き叫びたいほど悔...

NHKで紹介された自閉症

 ちょっと遅れますが、5月6日に 「自閉スペクトラム症 100万人 ~未来を拓く最新研究~」という題名でNHKでも自閉症診断の最新研究が取り上げられましたね。やはり何と言ってもNHKへの日本国民への影響を大きいですから、本当にこう言った企画が頻繁に取り上げられて欲しいです。  番組は診断の研究の最前線に焦点が置かれた番組構成になっていたので、診断の後の治療教育については比較的簡単に紹介された程度でした。紹介された部分も、最新のロボット機器を使った教育介入や最近話題になったオキシトシンの研究などで、話題性というか、「皆の目や興味を引くもの」が中心でした。オキシトシンやロボットは最近の話で、まだ実際に自閉症診断を受けた人への療育・介入として使えるレベルまで全然行っていないのに、そればかりが紹介されて、ABAを代表とする「効果が実証されているもの」や「今までにすでに役に立つやり方が分かっていること」ことは取りあげられないのは残念でした。  早期発見は最近ようやく皆さん重要性に気づき始めた印象もありますが、その後の早期療育にも同等の重要性があり、研究だけでなく実際の教育現場に力のある専門家のチームを送り込む必要があることは、まだ浸透していないようです。ABAだけでなく、専門性のある特別支援の教師、言語療法士、作業療法士など、様々な角度から適切な教育を受けられる体制をこれから作り上げていく必要があるのです。  

自閉症から見る「関わることの意味」:テレビ番組にて

 前回のブログで少しだけ「テレビの取材がきて・・・」と紹介しましたが、3月21日(月曜日)の夜7時から11時に放映される、TBSテレビ60周年特別企画「生命38億年スペシャル 人間とは何だ・・・!?」と言うテレビ番組で、私が名古屋の教室で療育をしている様子が取り上げられることになりました。番組についての詳しい情報は、番組のウェブサイト http://www.tbs.co.jp/ningentoha2016/ を見てください。私も実際にウェブサイトに行って「放送内容はこちら」のボタンを押してみたら、なんと私の写真もすでに載っていました。「いつのまに・・・。」まあ、そんなもんですねえ。・・・と言うことは、多分出るのでしょう。  私はテレビの取材を受けるのが初めてなんです。本当に時間のかかる大変な作業ですね。よくテレビに出ておられる先生もおられますが(テレビの製作側の方も含めて)、「よくやるなあ」と言う感想です。勉強になりました。去年の秋頃から数回に渡りミーティングがあって、その後カメラさんが来て3回にわたって撮影したので、5−6ヶ月以上に渡る期間がありました。こういった長い取材時間を取っても、実際に放映されるものは撮影したものの10分の1にもならないんじゃないですかね。編集の段階で随分カットされてしまうようです。全くもったいない。また、カットして短くなった分、一般に分かりやすくはなったのでしょうが、誤解される部分もあるでしょうし、どうしてもこちらが「ぜひ伝わって欲しい」と思っていたような細かな内容は伝わりにくくなりますよね。それがテレビと言うものと言われれば、それまでなんですけどね。  もちろんテレビ番組自体はゴールデンタイムで放映されることもあって、「自閉症の番組」と言う堅苦しいものではなく、「人はなぜモメるのか?」という一般に興味がわくようなことを対象としています。実は私もそこが気に入ってたんですよ。「自閉症」をテーマにするとあまりに真面目になって、重くなりがちですよね。でも、面白くなければやっぱり視聴者は見ませんからね。また、松たか子さんと安住紳一郎さんが司会をされるという番組というのも、なんとなく「真面目にやってそうな」印象じゃありません?実はこの特番はシリーズもので、私もこのシリーズは見たことがないのですが、聞くところによるとそれなりに定評があるらしいので...

個別教育目標(IEP)とカリキュラム

 「学校」と言うと、どんな印象を持つでしょうか?楽しい思い出が多い方もいらっしゃるでしょうし、逆に楽しい思い出よりお辛い思い出が多い方もいるでしょう。私の場合はアメリカにいる時は学校で勤務していることが多かったため、自分自身が学ぶ場所と言うよりも、すでに職場なイメージが強くついてしまいました。大学院で心理・ABAの専門家として専門的な教育を受けながらも、卒業後は学校など教員が主にリードを取って活躍する「学校教育界」に身を置く経験が長かったので、その現場から学ぶことも多かったように思います。そこで学んだことの一つが「カリキュラム」です。  ABAや心理的なアプローチの場合、個別を基本原則としている場合が多く、個人に合わせて目標を立てて、それを達成しようとします。しかし、学校教育的なアプローチでは、「カリキュラム」を使うことにより、個人個人ではなくクラス全体に行う集団指導を目指します。私は学校教育の専門家ではないので、カリキュラムとは何かについて説明するのもおこがましい話ですが、大きく言えば1年間生徒に何をどれだけ、どうやって教えるのか大まかな流れを示すものです。現実的には、先生自身がそのカリキュラムを決めなくても、一般にどの教科書を使うか決め、どれだけの時間をどの教科に当てるのかを決定することで、すでに何をどれだけ教えるのかが決まってしまいますから、自然に「カリキュラムに沿って」教えることになっています。  特別支援教育ではどうでしょう?アメリカでは特別支援学級において「IEP(個別教育目標)」を立てることが義務づけられています。しかし意外かもしれませんが、それは完全個別ということではありません。学校教育ではあくまで集団での教育を目指しています。必ずしも使う教科書は決まっていませんが、特別支援でお「カリキュラム」は同時に存在するもので、それにそって学校は教えるけれど、それでは足りない個別の部分のみを「IEP」に形にしていくのです。ですから、「IEPを見れば、その子の成長がわかる」という発言は必ずしも適切ではなく、IEP以外にもカリキュラムにそって色々なことを教えているのが当然なので、それ以外の学習もあってしかるべきなのです。  現在私は小集団の教室を運営していますが、個別の目標と、集団で行うことの両方を目指しています。集団で行うことは「カリキュラムがある」と言っ...

知的遅れのある子の個別目標

 新年の抱負は立てましたでしょうか?私はフランス語で「はらぺこあおむし」の絵本を読んでうちの息子に聞かせたいと思いつつ、すでに3日坊主で終わるような気もしている今日この頃です。なんでフランス語?意味はないです。特に子どもにフランス語を教えようという気もないので、私の趣味です。なんとなく面白そうな気がしません?フランス語で「はらぺこあおむし」を読んでいるのをYouTubeで検索すると、何人かの子(多分フランス人)によって読まれたバージョンがあって(画像は絵本のままです)。本文にはないのですが、絵本の最初と最後に、多分葉っぱを食べる音を表現したであろう言葉が出てくるんです。英語で言うところの、crunch crunch (クランチクランチ:ポテトチップス等固い物をバリバリ食べる音)に近いようなことだと思うんですけれど、フランス語のRの音って特別ですよね。それがどうにも日本語のカタカナではとても表現できない音で、子供が言っていると特に可愛いんですよ。皆様も見てみてください。  知的に遅れがあるというか、早期療育をしても普通学級に行くほどは知的な能力が伸びなかった場合、その後の目標に困る場合が多くあります。というのも、早期療育の段階の目標は、模倣だったり、マッチングだったり、物の名前を識別・弁別することを教えたり、定型発達になるべく追いつくための療育です。ABAには多数の教科書的な本も存在するので、比較的簡単にそこの中から目標を選ぶことができることが多いです。しかし早期療育がおわると急にそう言った教科書的な存在が少なくなってしまいます。その後の方向性は、必ずしも定型発達に追いつこうとするのではありません。それぞれのレベルで、将来子供がなるべく生活面・経済面でも自立していくようにスキルを教え、その子の世界を広げていくことになりますが、まあそれは定型発達の子供と同じ方向性ですね。  私の場合、1)お勉強的なこと(読み・書き・算数)、2)人とのコミュニケーション、3)生活関連・身体自立のこと、4)趣味・自由時間のこと、5)人と一緒の活動や体を動かすこと、この5つは欠かさないように行きます。もちろん、学校で行われるべきなこと、家庭で行われるべきなこと、塾や課外活動的に行われること、などあるので、親が全てを教えるということではなく、それら全ての場面の学習を合わせるとこの5つの領...