2013年7月7日日曜日

ABA:自然環境で行われるトレーニング(NET)

 昨日名古屋では一人というマスターソムリエのいるお店に行ってきました。彼一人でシェフ、給仕、ソムリエのすべてをやってしまう(彼だけで経営)ので、すごく小さくて、しかし良心的で(安くはないが、意外に高価なワインではない)、隠れ家的な小さなお店ですね。私はカリフォルニアのワインは結構飲んでいましたが、フランスのワインはあまり知らないので色々勉強させてもらいました。私の所もセラピー、親教育から、プログラムの作成、教材の準備、おやつの用意、掃除まですべて私一人でやっているので、全然違う商売なのですが何となく親しみを感じられます。ということで今回、ワインを飲みながら書いているので、少しいらないことを無意味に話しても勘弁して頂きたい・・・相変わらずいい訳ばかりしているという気もする。
 前回ディスクリートトライアルについて書きました。これを批判する感じで生まれたのが自然環境でのトレーニング(Natural Environmental Training: NET)で、今回はこれについて話します。基本的にディスクリートのようにテーブルに子どもを座らせて勉強させるような形態の療育ではなく、自然な生活の流れや遊びの中で色々なスキルを教えていくものです。インシデンタルティーチング(Incidental Teaching)とか、ミリューティーチング(Milieu Teaching)とか、PRTとか、VB(Verbal Behavior:言語行動)のマンドトレーニングとか、ABAの中の色々な方法を含んだ療育方法への総称ということです。今あげたそれぞれの療育法がABAの中で研究されて、効果をあげている。どっかで言いませんでしたっけ?ABAって行動の原理を応用させて人間の生活を改善するものすべてが含まれるので、それに基づいて色々な療育方法が生まれるんです。もちろん、今挙げた療育法だけではありません。ABAは一つの療育方法と考えておられる方が多いのですが、それは間違いですので、気をつけて下さい。
 中でも一番良く知られている例はPRT(Pivotal Response Training、ピー、アール、ティーと呼ばれる)というものですが、アメリカでは有名なテレビ番組でも紹介されました。「スーパーナニー」ってご存知です?「ナニー」と言うのは子どもの面倒を見る人のことを言うのですが、一般の家庭で近所の高校生をバイトで雇って子どものちょっとだけ面倒を見てもらうというレベルの「ナニー」もいれば、お金持ちの家庭で英才教育の一環として雇う教育の専門家である場合もあります。このテレビ番組は、いわゆる問題児というか、家庭内で親の言う事を全然聞かずにどうしようもない子どもがいる家庭に、この番組で有名になった「スーパー(超)ナニー」がやってきて親と子どもを教育し、問題を解決するというものです。紹介された子どもが自閉症の診断を受けていたケースがあって、PRTの創始者の一人であるケーゲル(Koegel)博士が呼ばれ、両親にアドバイスすることで問題解決の一環を担っていました。まあテレビですからちょっと上手く行き過ぎな感じもありましたが、ABAが一般の人たちへ紹介されたという点では良かったですね。
 PRTというのはPivotal Response Training(基軸となる行動のトレーニング)という意味ですが、基軸となる行動というのは、木で言えば枝葉となるものではなく幹になるというか、必要不可欠な重要な行動ということです。「自発的に交流を求める行動」や、「自分で自分の行動を制御すること」、「色々な情報に(同時に)反応出来るこおと」などが「基軸となる行動」として選ばれています。ディスクリートのように小さな行動を一つずつすべて教えるのではなく、少ない数のもっと大きな(塊の)重要な行動を教えることで、他へも良い影響がある(他の行動も学ぶ)というのが理念です。子どもの「動機」を大切にすることが大前提となるため、教える際も「子どもに選択させる」「できる課題とできない課題を混ぜる」「色々な課題を混ぜる」などというような方法が取られます。私のウェブやブログを読まれた方は気づかれたかもしれませんが、「基軸となる」行動を教える(すべての行動を教えずに、鍵となる行動を教える事で一石二鳥を計る)という考えは私も大賛成です。子どもの「動機」も大切にしたいです。
 他の療育の紹介は省きますが、自然環境でのトレーニングというには色々な方法があります。自然の流れの中で教えるという以外「これだ」という共通点はないのですが、「子どもの興味を追う」という方法が多いようです。どういう事かというと、大人が好きな時に教えるのではなく、子どもが欲しい物を見つけた時に教育が始まるということです。例えばインシデンタルティーチングでは、子どもが棚の上にあるオモチャが欲しい時、棚の上にあるオモチャを動機付けとして使って(強化子として)教えたい行動を教えます。VB(言語行動)のマンドトレーニングでは、「ちょうだい」などの要求(マンド)の仕方を教えるでしょう。(私はVBというか言語行動についてはかなり専門的に勉強して来ているので、また次の機会にもうちょっと教えますね。)
 利点としては、やっぱり子どもが自分から何か欲しいと思った物や活動を使うのですから、子どもの乗り具合が違いますよね。ただし、すぐに想像出来るかもしれませんが、子どもが興味のある物が見つかるまで待っていたら、教えられる機会が限られてきますよね。ミリュートレーニングの中では、欲しい物が見つかった時に、それを使って5回連続で教育の試行を繰り返すなんてのもあります。さらに、子どもが教育のきっかけを自ら作るということですから、療育側が(こう教えようという)準備や計画がしにくい。理念は高いのですが、そう簡単に行かない訳です。研究でも、一つ一つの行動を教えた研究は出ていても、ロバース博士が出したような「2年間、週に40時間やった結果こうなった」というような、プログラム全般の結果の研究が出ていないので、ディスクリートトライアルと比べてこれの方が良いとは言えない、というかむしろ、ディスクリートの方がその効果が明らかに証明されていると言って良いでしょう。
 ちなみに私はNETとディスクリートと両方を合わせて半々ぐらいで使います。というか、最初のうちはディスクリートを全面に使い、徐々にNETに移行して行くのが理想ですね。最初は簡単な行動を少しずつ教えてベースを作った後に、徐々にその教えた事を般化させて、自然に行動ができるようにしていきます(というか、せっかく教えても使えなければ意味がない)。NETの、子どもの「やる気」を大切にするという理想は本当に「その通り」と共感しますが、実践はそう簡単にもいきません。ディスクリートと比べて、専門性が求められるということもありますが、「どうやって子どもの興味を使いつつ、こちらの教えたい事を教えられるのか?」「実際には具体的にどうするの?」という具体性に欠ける印象です。教科書というかガイドブックというようなものもあるのですが、実際にどうするのか具体例があまり少なくて、私的にはもどかしい気持ちになります。私の場合は療育の経験から「こうしたら良い」というやり方を私なりに見つけ出してその埋め合わせをしています。
 では次のブログでは私のしていることを書きますね。

1 件のコメント:

  1. はじめまして。今大学のオンラインコースを受講中にPRTの日本語の説明が見たくてこちらにたどり着きました。NetとITの違いも、はっきりしていなかったので助かりました。ありがとうございます。

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