自閉症の子の卒業、小学校へ入学、そして将来

 4月になりましたね。それにしても暑い。暑すぎて、頼まれてもいないのに毎年やってくる、あの足長蜂たちも大活躍なんでしょうね。まだ4月と言うのに玄関先に作られた巣を駆除いたしました。それにしても玄関先に巣を作るのはやめて欲しい。朝ドアを開けてすぐに蜂と目を合わせるのは、怖すぎる。
 私の小さな教室でも3月は卒業生ラッシュでした。これまで4年以上も来てくれていた生徒さん達も含めて、今年度は15人以上も卒業して小学校に入学して行きます。卒業後の進路はそれぞれで、普通学級に行く子も、特別支援級に行く子も、特別支援学校に行く子もいます。成果もそれぞれで、あんなに泣いて拒絶しまくった子がノリノリで主活動をやったり、あんなに工作に無関心だった子がニコニコで工作の先生を呼んだり、ロボットみたいなセリフを言っていた子が友達を家に誘いまくっていたり、人をすぐに叩いていた子が小さい子に優しくオモチャを譲ったり、成長のエピソードもそれぞれです。
 現在は早期教育が当たり前になって来て、小さい子の塾も乱立していますよね。ただドリルをやりまくっても教育効果が上がりにくいとは分かってはいても、ついつい「詰め込み型」の学習に走ってしまうぐらい、「早いうちに何かしなければ」と言う漠然としたプレッシャーもご両親には大きいかと思います。普通教育であろうと療育であろうと、目の前だけでなく長期的な教育の効果を見据えた計画が必要になると思います。
 ABAを使った自閉症の療育では、スキルを直接訓練するタイプをディスクリート・トライアル・トレーニング、そしてモチベーションを高めて自己学習を増やすやり方をPRTなどとも言いますが、どちらの視点も大切です。ちなみに私の教室のルールは、「みんなが楽しい」です。教室に通われる期間が長ければ長い程、教室での活動へのモチベーションも高くなり、教室でやった活動が大好きになって行きます。色々な活動を好きになると言うことは、家でも外でもそれを考えていたり、やってしまうようになりますから、自分からスキルを学習することに繋がります。教室ではモチベーションを高めるタイプの教育にも力を入れていますから、時に「楽しいだけで大丈夫なのだろうか?(もっと勉強させなくて大丈夫なのだろうか?)」と不安になられた保護者も中にはおられたかと思います。
 スキルはできるだけたくさんあった方が良いと思います。しかも、いろいろな種類あった方が良いと思います。ただし現在学習しているスキルの数や種類だけを見るではなく、新しいスキルを継続して学習していこうとする行動傾向も必要になります。持っているスキルが高いことよりも、スキルが増えて行くベクトルが上向きになっていることの方が長期的にはたくさんのスキルを学習することに繋がる可能性があるのです。将来伸び続ける生徒さんに育つために、「学習への好奇心」をどれだけ育てられたでしょうか?新しいことに対して失敗を恐れずに興味を持ってやってみようとする行動傾向を育てるには、結局「新しいことにチャレンジして楽しかった」と言う一見地味な体験を一歩ずつ積ませて行くしかないのです。教室では新しいことをパターンにして繰り返し提示したり、難しいことを分解して簡単にしたり、すでに好きなものと関連付けて提示することで、「やれる」「できる」「思っていたより楽しかった」体験を1つ1つ積み上げて行くのです。
 私の言うことを信頼して何年も教室に通ってくだ来て下さった生徒プラス保護者さん達ですから、こちらも生徒の卒業への思い入れも強くなります。3月の最終週は保護者の方も泣く方もいて、つられて私も泣いて、本当に情緒不安定な1週間でした。卒業生とその保護者の皆様、ありがとうございました。

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