2013年8月11日日曜日

基軸となる社交性のスキル:Perspective Taking 相手を見て自分の行動を変える

 昨日仕事で九州に行ってきました。8月10日は帰省ラッシュのピークらしいですね。新幹線の指定席の予約?3日前に予約に行ったら、やっぱりすでに始発から一日全部満席でしたね。名古屋駅ではやっぱり混雑していて、自由席の所はすでの長蛇の列。「メーテレ」と書かれたテレビカメラを持ったテレビ局の人たちも帰省ラッシュの撮影しています。列の短い所ないかな。フラフラ歩いていると、1号車の一番先の乗り場は誰も並んでいません。忘れられていたんですね。一番先頭に並べました。これなら座れるかも。私の後ろにはすぐに人が並び始めました。ラッキー!笑顔満々で並んでいたら、子どもが走って来て列の後ろにつきました。しかし驚いたのは、その後からやって来た親が、列に並んだ子どもを叱って列の最前列(私の横)に並ばせたのです。しかし手話で話しているため、その親子の話の内容はイマイチ良く分からないので、横入りしようとしているのかただ次の列車を待とうとしているのか、よくわからない。「え?」っと思ったままぼんやりしていると、新幹線が到着すると(横入りしたとは知らない)乗務員が子どもを優しく私の前に入れてしまい、結局その家族は横入りしたために一番に空いた席に座れて、私以降の人は座れませんでした。どういうことだ?子どもが列に並ぶという適切な行動をしていたのに、常識のない親がそれをわざわざ自分の都合の良いように(社会の常識を無視するように)教えてしまっている。それを注意すれば良いのに、黙って見てしまっている私も私ですよね。意気地がない。やはり手話で話している人に話が通じないんじゃないかみたいな(というか、手話のできない私は相手の言っていることはわからない)戸惑いはありますが、でも、常識のないのは誰かが注意しなければいけない・・・え?私が注意する?え・・・私はちょっと・・・(←全くだらしがない)。結局岡山ぐらいから座れましたね。座っているお客さんから、「私次降りるからねえ。」なんて言ってもらったりして、まあ世の中良い人もいれば、そうでない人もいるということですね。
 まあ社交性のスキルというのは、本当に難しい。はっきり言って世の中には私も含めて社交性のスキルのない人があふれている。この家族なんか、周りの人の視線なんか完全に無視しているということですよね。最近テレビでは「空気読む」とか、周りの人のちょっとした表情を読んで対応を変えろというような感じのことも言われますが、本当に読める人ってのは、逆に少数派かもしれないですね。
 自閉症の療育では、こういった周りの人の様子を見ながら、それに合わせて対応を変えるということを少しずつ教えて行きます。高機能の自閉症やアスペルガーだったりすると、ちゃんとお話もできるのに、基本的に話し相手や遊び相手の様子が全然見えていないというか、相手が嫌そうな顔をしていても、平気で自分の好きな話を続けたり、自分の好きな物を他の人にも押し付けてしまったりすることが多いです。人は自分と違う考えを持っているから、相手が今どんな気分になっているのかを観察し配慮しながら交流するという人間関係の基本がわからないのでしょうね。英語では、perspective taking なんて言いますが、思い遣りというか、相手の立場に立って考えるということです。これは分からないのですから、怒っても仕方のないことです。しかし、丁寧に時間をかけて教えることはできます。意外でしょ。教えられます。
 まず始めには相手を「見る(観察する)」ということ。次には、相手の反応は何を意味しているのか「査定する(判断・弁別する)」、最後にはそれに対応した「場面に適切な行動をとる」という3つの行動すべてが出来ないと行けません。良くある失敗例は、最後の「場面に適切な行動」だけを教えようとすると、観察して判断する力のない子どもはどうしても次に同じ場面に出くわしても、対処することはできないということです。さて、例を出してみましょう。会話の最中に子どもが自分の好きな話を長々とし始めたとします。セラピストは、イライラとしたような表情をします。子どもは全然気づかずに話を続けるとします。この場合、上記の3つの行動のどれかができないということです。どれができないのかは、分からないので以下のような方法で教えて行きます。
 この場面で、セラピストはテストとして、わざと大きなため息をつきます。気づきますかね?それでもダメな場合は、「あーあ、退屈。」とか言っても良いです。こういった大げさなジェスチャーに気づいて「どうしたの?」等と言ってくれる場合は、自閉の程度がそれ程悪くない場合です。だいたい自閉症の子どもは大きなため息をつかれても、無視して話し続けます。話し相手の行動が見えていないか、見えていてもそれが悪いと思っていないか、悪いと思っていてもどうしたら良いのか分からないかの、いずれかです。そのまま話し続けている子どもには、「今先生何してた?どんな顔してた?」等と言って顔やジェスチャーを見るようにプロンプトします。「ため息ついてる」と言えた場合は、見えていることは見えている訳です。それがどういう意味か、どう対処するのか分からないということです。見えていない場合は、もう一度やって見せて、「ため息ついてるね。」等とそれに名前を与えてやります。次にお同じような場面で、大げさなジェスチャー、動作をやってみると良いでしょう。気づいて、それに名前を付けることができたら、褒めてやりましょう。
 そして次の段階(査定・弁別する)に入ります。ため息をついていることが分かったら、「じゃあ、先生今どう思ってるの?」と聞きます。これは、相手の行動から、相手の気持ちや状態を想像することを教えるのです。自閉症の子どもは、相手が例えば震えていても、「寒い」と分からなかったり、膝を抱えていても「膝が痛い」と分からなかったりする場合があるので、その場合はそこから教えなければいけません。ため息をついているということは、「退屈している」「何か嫌なことがあった」ということです。それが言えるでしょうか?言えなければ、「ため息をついたら、先生はつまらないんだよ。」と教えてあげます。そして、「楽しくないことしたい?相手がつまらなかったら、次には話を聞いてもらえなくなるかもしれないよ。何とかして、相手を楽しくしようね。」と問題があるサインなのだということを教えます。そういうことをしっかり自分から言えるようになれば、「そう、よくわかったね。先生がため息をついていたから、退屈していたね。気づいてくれたね。」と褒めてあげるようにします。次に同じような機会を作って、自発的に答えられるか試してみましょう。
 そして最後です(その場に適切な行動を取る)。「相手がため息をつく程退屈している」という問題(social conflictなんて言います)を解決しなければ行けません。どうするのか?私は大抵、「両方が楽しくなければいけないよ。」という大きなルールを教えて行きます。相手が退屈していも行けないし、自分が楽しくなくても行けない。それを解決するには、「ごめんね。退屈したね。後で○○ちゃんの話も聞いてあげるから、これだけ言わせて。すぐに済ませるから。」でも良いし。「あ、他の話が良かった?」と話題を変えても良い。話を相手の好きな話題に絡めていくということでも良い訳です。相手の行動を無視するのは行けないし、自分が全然楽しめないのでも困るのです。それをできるような解決策の例を見本としてみせてあげて、練習させてやるのです。自分から、解決策の例をあげて問題を解決しようとした時に、しっかり「話を変えてくれて良かった。先生はこんな話がしたかったんだ!」と具体的に褒めてあげましょう。
 そして、この3つがいずれもできた時点で、ちょっとため息をついたぐらいで、気がついて、しかもその解決策を呈示できるようになり、「良かった。気づいてくれたから、退屈せずにお話が楽しかった。」などと、褒めてあげられるようになります。相手の様子を見て、それに対処していくというのは社交性の根幹にあたるようなことなので、非常に大切なスキルです。ただしちょっと、注意点があります。解決策の中で「話をすぐに済ませる」と言いましたが、簡潔に話すということが難しい子もいますので、注意して下さい。これも教えられますが、それなりに習得に時間がかかります。相手の興味を知り、それを利用しながら自分の話を面白くさせるというのも、またかなり高次のレベルの別のスキルとして教えなければ行けないかもしれません。自分の話を諦めて、別の話題にするということが難しい子もいます。というか、こういう場合が多いですかね。これもやはり時間はかかりますが教えられます。だから人間関係って難しいんですね。こういうことの教え方ももっと聞きたかったら、リクエストして下さいね。

1 件のコメント:

  1. 暑いですね。社交性のスキルの指導について、もっと伺いたいです。はら

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