基軸となる行動2:独り言という言語行動

 先日愛知県の稲沢市で引きこもり・・・あれ?・・・立てこもりか、の事件がありましたよね。うちの姉の住んでいるところの隣だったみたいで、警察が包囲していて家に帰れないってメールがありました。怖いですね。最近本当に近所でも色んな事件が起こる。いつ巻き込まれるかわからない。おかげで姉は漫画喫茶で義兄と一緒に暇つぶし。結構楽しんでたみたいね。容疑者が掴まった時は、「根性無しが!明日会社休めんだろう!」ってメールが来てました。そうか、会社休む所まで予定されてたんだ・・・。
 最近はメールなどで簡単に自分の目の前で起こっている事、経験した事を人と共有できます。Twitterなんかは「つぶやき」なんて訳されているけれど、本当に独り言を人に聞いてもらうような感じで、目の前に起こった事や頭に思い浮かんだ事をそのまま言葉にして、インターネットで人と共有できます。インターネットはさておき、この「つびやき」もしくは「独り言」をすると言う行動も、人間が生活して行く上で重要な行動であると思います。独り言ってしない人いませんよね。しかも、独り言を使って自分の行動をコントロールしていることが多いと思います。独り言が完全に無言だったりすると、生活に支障が出て来るでしょう。例えば、電話番号を教えてもらったら、 「080、33の・・・」というように、頭の中で(もしくは声に出して)紙に書いたり携帯に入力したりするまで繰り返すことで、番号を「忘れない」ようにします。例えば路上に駐車する時に駐車禁止のサインが出てたら、「あ、駐車禁止だ」と頭の中でつぶやいてから、回避したりすることもあると思います。前回の「Executive Functioning」でも説明しましたが、こういう人の生活と切っても切れない大切な行動を、基軸となる行動と言います。独り言自体が他の色々な行動の基礎になっていると思われます。
 ABA行動分析で言えば、スキナーの言語行動ですでに語られていることです。スキナーは「聞き手」「話し手」というような分け方をしますが、自分自身が「話し手」となり、それと同時に「聞き手」ともなるのです。人から与えられた指示を繰り返すことで従い易くなったり、状況をナレーションすることでその状況に対して反応しやすくなったりする効果があります。しかし実際の所ABA関係ではあまり熱心に研究等されていない行動です。独り言というのは目に見えない行動のため観察しづらいというのも、研究のしにくさの一つです。自分で自分の行動に反応する連鎖反応みたいなものがまさに言語を使う人間の行動の醍醐味だと思うんですが、みなさんどう思われますか?
 自閉症の治療教育においも重要な行動の一つだと私は思います。自分で自分の行動に反応することができると、色々生活の中で役に立つ。例えば、「スプーン3つと台ふきん持って来て」というような長い指示を出された場合や、取りに行く物までの距離が長い場合、出された指示を自分で繰り返すことができないと指示を忘れてしまうので必要不可欠です。初めて行く建物に入った時、「あ、下駄箱がある」と口で言えた方が、「靴を脱いでそこに靴を入れる」という行動が出やすくなるでしょう。実際3−4才の子どもは遊び中見た物を口に出して話すことが観察されており、それは年齢とともに徐々に口に出さずに頭の中で「考える」という行動に変わります。私はお母さん方に、子どもと遊ぶ時には「ナレーション」を入れるということを勧めます。遊びの状況を言わば実況中継のように話す(ナレーションする)ということで、子どもに独り言の使い方の見本を見せます。時には話し始めを言って途中で止め、子どもが続きを言ってくれるかどうかも見ます。こうすることで、徐々に独り言を使う機会を作って行きます。
 さらに話を進めると、独り言を自己プロンプトに組み入れて使うことができます。自分から中々行動してくれない、他の人から手助けされるまで (プロンプトされるまで)待っている子どもって多いじゃないですか。先ほどの例で言うと、初めて行く建物に入る際下駄箱がある場合、「ほら、靴脱いで」という手助けをしてしまうと、「靴脱いで」に反応して靴を脱ぐことになる(将来靴脱いでと言われなければ脱げない)。「あ、下駄箱がある」という手助けをした場合、下駄箱を見て下駄箱に反応して靴を脱ぐことになる(下駄箱を見る事で靴を脱ぐ事を教える)。これを利用して、初めて行く場所に入った際に周りを観察して大まかな事が口に出来るようになると(「あ、靴箱だ」「エレベーターだ」「警備員がいる」など)自分でそういう状況に対処しやすくなる。遊びでもそうです。他の子どもと一緒に積み木で遊んでいるとき、「あ、カナちゃんは家を作ってる」と言う事で、次に続く「トントン、遊びに来たよ。入れて下さい。」とか「僕はじゃあ線路を作ろう」とか、状況に合わせた行動を取りやすくなる。
 ちなみに私が英語を話す時も、独り言って大切です。英語を話す時はだいたい頭でも英語で考えています。常に頭で考えていることで、色々な言葉がでやすい状態になっている。逆に言えば、日本に帰って来てしばらく英語を使わない(日本語で常に考えている)状態になると、突然英語に戻ろうとしても比較的スムーズに言葉が出て来るまでに時間がかかります。これは想像でしかありませんが、その状況にあった適切な独り言ができる子どもと比較すると、頭の中で無言だったり、関係のない言葉を繰り返している子どもだったりする場合には言語の発達のスピードが遅れてしまうのではないでしょうか?

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