強度行動障害に対する行動分析学からのアプローチ

  しばらく前にも紹介しましたが、先のABAサービスと名乗る人物による傷害事件が起きたことにより、行動分析学会が7月31日に無料のオンライン公開講座「強度行動障害に対する行動分析学からのアプローチ:より正確な情報提供のために」と言うものを発信しました。それが100名限定ですぐに埋まってしまったとのことで、その後にオンディマンドでも視聴できるようになり、私も視聴させていただきました。

 講演内容が良かったです。2時間半くらいの動画なのですが、はっきり申し上げて内容は難し目です。ABAを専門とされていない方が、最初から最後まで全部見ようと思うと挫ける場合もあるかと思います。しかし中でも武藤先生の話は非常に分かりやすく具体的で、ABA専門の方でも興味を持って視聴していただけるかと思いますので、興味はあるけれど挫けやすい方や時間のない方は是非とも武藤先生の部分だけでも視聴されると良いと思います。

 武藤先生のご講義は、容疑者の方(…方って敬語を使う必要が?でも、まだ疑惑が確定した訳ではないので、犯人扱いはダメですよね。)の、youtubeにアップされているその方の講義の動画を出しならが、それを丁寧にABAの視点から解説されていました。講演会のようなこともたくさんやられている方なんですね。その方は、動画の中で非常にたくさんのABAの専門用語を使って講義をされているようで、それなりに勉強はされている感じでした。部分的にはABAの専門家から見ても「そうだよね」と言えるところもあり、何がおかしいのかな?と言うところから始まって、徐々に「ええ?それは違うんじゃないの?」となる部分が出てきて、また「その古い情報で…」と言うところもあり。普通に考えたらABAを使って「生徒に暴行」ってことはあり得ないのですが、結局は、ご自身の独自のセラピーのやり方を確立されており、それをABAの専門用語や専門書を引用して「正しいもの」と理論武装しているだけで、実際の「ABAのやり方・スタンダード」からは、かなり外れてしまっているものになっているようでした。

 ABAの中でも「自己流」はある程度部分、あって良いかと思っています。しかし、それが「本筋」からあまりにかけ離れて元のものが分からなくなると言うことも、可能性としてはあることかと思います。私自身も、ABAの理論に基づいて、私なりの療育をしている部分もあります。この事件を通して「うーん。私のやり方も、放っておいたらこの人のように、ABAとは呼べない療育になっていってしまうのでは?」と自身のサービスに対しても不安になってしまいました。BCBAと言う認定を持っていると、必ず新しい情報を取り入れたり、学会などに通いながら、勉強を継続させることが認定更新のためには必要になります。自身の療育を、新しい科学的な研究を元に、アップデートしたり、自身のやり方をもう一度振り返ったり。こういった部分は専門家としては不可欠な部分なのかと再確認いたしました。

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