小学校時代の自閉症の療育と学校教育について

 2月27日(土曜日)はBlueRingでの無料講演会でした。参加していただいた方、ありがとうございました。自閉スペクトラムを持つ子どもの療育に、日々戦っておられるABAの実践家、それから保護者、そして事業家が連携しての講演です。無料ですが内容の濃い見応えのあるものに仕上がっていたと思います。(企画する側なので自画自賛ではありますが。)講演されたボランティアの先生方、ありがとうございました。講演日から2週間は無料で見逃し視聴もできるようなので、もし間に合わなかった方がおられたら、https://youtu.be/Ke8qW07mhtEから視聴してみてくださいね。

 私の講演は題目は「小学生時代に身につけたい6つの姿勢」という題名でお話ししました。ABAで最も有名なものは、「自閉スペクトラム症の児童への早期集中介入」です。就学前、特に2、3歳などの幼い年齢からの集中的な療育が科学的に効果があると検証されています。「効果がある」と言うのは、言語、生活上の行動、コミュニケーション全般などに大きな改善が見られるということです。「ABAがなかったら、この子は何か嫌なことがある度に、泣き叫んでばかりのまま大きく育つのかな?」と思われるような生徒もいます。ABAに巡り会えたことにより、好きなことも増え、言えることもしっかりと言えて、コミュニケーションが全般に楽になるという体験は、支援する側から見ても保護者からしても本当に嬉しい瞬間です。しかしABAの早期介入を卒業したからと言って「もう何も支援が要らない」と言う生徒は実は少数派で、逆に大部分の生徒が、小学校に上がってからも何らかの支援が必要な場合が多いです。ABAを長年やってきた支援者側から言うと、早期療育の後の、小学校教育も同じくらい大切なのです。特性のある生徒さんに対して、教え方を色々と工夫して、常日頃頑張ってくださる学校の先生や、保護者が一人でも増えて欲しいし、そう言う人へのサポートがしたい。一般に小学校時代の教育は子どもの人生にとって重要な位置付けにあるのは当たり前のことで、幼児期の教育も、学校教育も、親は継続して「子供にとって一番良い教育」を探し続けるところになります。子どもへの教育としての選択肢の一部としてABAが多くの場所で手に入ることができたら良いな、と妄想しています。今の段階では非常に遠い未来のようにも見えますが。

 今回の題目を考える中で、私も考え方に変化があったのですが、一時的な心理療法としてのABA療育の位置付けから、恒常的な教育としてのABAの位置付けへの考え方のシフトです。ABAは心理学の1つでもあり、特に私学んだ大学は心理学部にABAの学科が存在したので、不健康な時に(行動に問題があるときに)ABAなどの介入を使い、「ABAが必要なくなることを目標に」と私も学生時代によく教えられてきました。私の介入の後に「卒業」があることが大前提であり、大切なことであり、クライアントが私に依存してはいけないと言われてきました。しかし私が実際に臨床現場で体験してきたのは、心理療法(集中的な介入)は終わって欲しいけれど、「教育や子育ては終わらない」と言う事実です。アメリカでは特別支援教育の学部の中に ABAの学科が存在するところもあり、実はABAは教育を効果的にするものとしても科学的に証明されているものです。そう考えるとABAを使って生徒の教育を伸ばす学校、塾、教材などが、もっとたくさん存在して良いのですが、現状はまだ数えるほどしか存在しない。私もアメリカで学校の中で働いていましたが、アメリカでもまだ「問題行動の専門家」的な捉えられ方をしてしまうことも多く、「いや、問題行動だけじゃないよ。ABAで教えたら、もっと楽しいよ。」といつも思っていました。教育や子育ての一環でABAを自然に使い、例えば親、学校の先生、塾の先生など、できるだけABAの専門的でない人が、ABAを知って生活に生かせるような時代になって欲しい、そんな気持ちで今回の講演内容を考えました。

 ただ、今回の講演も内容が少し難しくなりすぎたと言うご指摘を受けております。私の場合、色々と話したい気持ちや、科学的にも証明されているという証拠を少しでもシェアしたい気持ちもあって、話が難しくなってしまう傾向にあります。結局なかなか全ての人に容易に伝えると言うのは難しいものです。簡単に説明できるように、がんばります。学校教育だけでなく、人生って一生学びですよね。「生涯教育」と言う観点からもABAを使う発想にチェンジして、もっともっと人々にABAが浸透してもらえたら良いなと思います。

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