自閉と感情表現

  健康診断で血圧で引っかかりました。1回目に測った血圧が正常値だったから良いじゃんと思うのですが、2回目ダメなら「精密検査」と検査結果は出るんですね。心臓機能は自覚症状もなく悪くなることもあるし、やっぱり精密検査を受けた方が良いか、うーん面倒臭い。まあ年齢とともに色々と体の不具合が出るのも仕方ないですね。

 自覚と言えば、自閉の傾向がある子どもたちの多くが、自分の気持ちに対しての自覚が薄いと私は考えています。表情がもともと薄いというか、気持ちの上がり下がりが顔に出ない子どもが多くて、本人も自身の気持ちに自覚がないのです。周りの大人は表情から気持ちが読めないので、気持ち自体がないと勘違いしてしまいます。気持ちのあるなしは(心の中のことなので)結局は本人にしか分からないのですが、私の療育の体験からすると、感情自体がないのと仮定するより、気持ちへの自覚がないと捉えた方が行動の説明がつきやすいです。例えば人の物を壊すという問題行動がある場合「もしかすると、自分だけ物がもらえていないことを羨んで、それが欲しくて物を壊すという行動に出たのでは?」と推測すると、問題行動の対処は「それが欲しい」と要求させることだとわかりますし、かつ対処によって問題行動がなくなれば、その欲しい・羨ましい気持ちがあったこと自体の証明になります。他にも、感情の爆発(癇癪や大暴れ)があった時に「もしかしたら辛かったのかもしれない」と大人が気づくきっかけになることもあります。

 自覚がない子どもにいかに自身の気持ちを表現し自覚させていくのかは、教える側からは本人の気持ちが見えませんから、難しいですが重要なプロセスです。まずは状況と行動を観察して、問題行動の前に何が起こっているのか、感情を引き起こす何かがあるのか、しっかりと汲み取ることが一つ目のステップになり、ABA的には機能分析とも言います。また小学生になって大きくなってくると、いろんな形で頭の中のことや気持ちを表現させる手段を増やすことで、周りの大人も本人の心の中の変化に気付きやすくなります。絵日記はその手段としてよく使います。言葉にはなっていなくても絵を描くことで、楽しいことやストレスのあったこと、心の変化を表現し、周りに理解してもらうきっかけになるので、頻繁に小さなことから絵に描かせていく練習をさせます。例えば本を読んだ後で感想の代わりに絵を描いてもらったりして、どんな稚拙な表現でも良いので、何かしら外にアウトプットする機会を作るのです。

 絵だけでなく、自発の言葉全体を増やすことも非常に重要です。言葉の発達が遅れていた子どもが言葉を少し話し始めると、あまりに無意味な言葉だったり、ちょっとその場にそぐわないことを言ったりして、大人からすると「それはおかしいでしょ?」というような反応をしてしまいがちです。しかし自発の言葉は本人の頭の中では何か繋がって出てきてはいるので、なるべく聞いて自発の言葉を増やして(強化して)あげることが大切になります。徐々に言葉が増えてくると、「ああ、その言葉はそういうつながりで(そういう意味で)言っていたのか」とわかる瞬間が増えてきます。自発の言葉が増えてくると、本人の行動の意味合いが、問題行動が出た理由が、少しずつわかりやすくなってきます。こうなると子どもとのやり取りも少しずつ楽しくなってきます。

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