第36回行動分析学会

 昨日は非常に大変な台風が本州を縦断し、大きな被害が出ました。ただし、今回は昼間に台風が縦断したことと、予測できない自然災害が続いたせいか、「何十年に一度の大きな台風が縦断する」と言う大きな報道も流れ、比較的対策が早かったと思います。大型デパートやテーマパークは迅速に休業の予定を出し、交通機関も早い段階からストップする可能性を示し、警報も比較的暴風などが酷くならない早い段階から出たために学校の休校も早い段階で決定したと思います。その分、台風と分かっていながら出勤し(遊びに出て、学校に出て)て事故に巻き込まれたり、帰宅難民になったりといった無駄な事故は防げたと思います。たまには私もポジティブな発言をするんですよ。でも、これは非常に大切なことではないでしょうか?もう今までの想定では対処できない事態が何度も起きているのですから、早めに対処して事故を防いだ方が良いに決まっています。
 こういった社会全体の行動を変えることが本当は必要ですが、難しいことの現実です。例えば、まずは社会全体の雰囲気として「早めの行動をしなければ」との理解が必要ですし、社会の意見に合わせて、行政、企業、学校などの団体もトップから「早く対処しなさい」と言う指令系統をしっかりと働かせる必要があります。
 今回行動分析学会に参加してきましたが、私も学会の一員として、ABAの専門家として、社会全体のシステムを変えるために動くという部分に、まだまだ学会員として頑張らねばならない努力の余地があると痛感しました。例えば、今回面白かったの発表の一つ(実は参加できなかったのですが)は、「応用行動分析に基づく早期療育の公費化の可能性」と言うシンポジウムがありました。自閉スペクトラム症への早期療育は、随分前からABAが効果があると言うことが分かってきており、アメリカでは健康保険などの費用が使われるなど、一般にABAが広く知られるようになっています。私自身もすでに日本に帰ってきて5年になり、実際上児童発達支援という公費の枠組みを使ってサービスを提供しています。しかし、あくまで福祉の法律であり、ABAのサービスを提供しやすい法制度ではないものです。しかしこういった法律の改善などは、社会全体の理解が必要になります。アメリカの真似とまではいかなくても、そのシステムがABAのサービスを提供しやすくなるように、まだまだ改善の余地のある分野です。保護者の声、学会の声を、今回の発表のような形で社会に打ち出していくことも、社会全体への啓蒙の一環として、どんどん行っていくことが必要だと思いました。
 ただ、行動分析学も心理学の一部であることもわかるように、全体としてはまとまるのが苦手なタイプの人たちが集まっているとは思います(お気づきでしょうが私も含めて)。「PBS/ACTの行き着く先は「行動分析学との決別」か?」という発表もありました。アメリカのようにABA自体が非常に大きくなっているところでは、PBSやACTなど、ABAの一部でありながらも特殊なグループがまとまってABAよりも社会では知られるようになったりすることもあるのです。日本ではまだ分裂を心配する程の大きな動きになっていないようですが、これから学会員全体として分裂ではなく協力しなければならない場面が多くあるでしょう。例えば、現在は日本ではBCBAのような行動分析の認定・資格がありません。社会から「専門家」として法制度の中に組み込まれるには、誰を専門家と呼ぶのかを決めるのは必須事項です。私のように海外でBCBAの認定を取って来られる人は、日本では本当に一握りしかいないです。どのように今後行動分析を広め、必要とする消費者にサービスを届けられるのか?そしてそのために、どのようにして行動分析の専門家の育成を進めて行くのか?どこまで教育されれば「専門家」として認められるのか?学会としての意見の一致が必要になってきます。

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