遊びの場面でのセラピー:自分のペースで・・・

 ご報告ですが、私にも子どもが産まれました。もう少しで2ヶ月になります。最近顔もぷくぷくしてきました。まあ可愛い。赤ちゃん笑う時ありますよね。毎日写真をバチバチ撮ってます。産院で産まれて1時間くらいの時の写真も、額に入れて持って帰ってきたのですが、さすがにげっそりした顔してますね。頭の形も、なんだかピラミッドに描かれてる頭の長い人みたいな形ですごいし。もちろん産む方もそうですが、産まれる方も大仕事なんでしょうね。何時間もかけて一生懸命出てきて、げっそりしたところを、「はい、チーズ」って一生残る写真を撮られる・・・子どもが話せたら、「今さあ、産まれてきたばっかりでしょ?わかる?大変なんだからさ。冗談じゃないよ。もっとましなところを撮ってよ」とでも言いたいんじゃないでしょうか?自分のペース、タイミングってものがあるでしょう?言葉が話せないというのは、自分のやりたいことも表現できないので、中々大変ですよね。
 逆に自分のペースに巻き込むのが上手な子どもっていますよね。遊んでいる時、例えばおままごとでお人形さんに「ズボン履かせてあげようよ。」と話しかけると、「先生お名前は?」とか、全然関係のない(答えを自分が知っている)質問をしてきたり、「あ、あんなところに電車が!」とか、要は相手の質問や指示を自分の質問やコメントで返してしまうことができる子どもです。上手といえば上手なのですが、人からの誘いには全然従わないので、結局遊びの中で色々と教えようとしても教えにくいです。無理に大人が指示を通そうとすると、すぐに遊びに興味を失ったり、もしかしたら泣いたり騒いだりするかもしれません。ですから、特に経験の浅い人だと子どものペースに乗っかってしまって逆に指示に従ってしまいます。また、大人にはその方法で自分のペースに乗せられるのですが、他の子どもは「何それ?」って感じでペースに巻き込まれないので、すれ違いのまま平行線で、結局他の子どもと遊びに発展しなくなってしまいます。
 私の場合、こういった自分のペース型の質問・コメントをする子は、私が最初に出した指示に必ず従わせます。ただし、その子の質問やコメントも無視はしません。例えば、おままごとの人形のズボン履かせようとしても「お名前は何?」などの質問で返す場合、「ええ?ズボン履かせようって言ったじゃん。無視ですか?しかも名前何ですか?って名前もう知ってるし。無視する子は・・・こちょこちょの刑だぞ。(くすぐる。子ども笑う。)はい。じゃあズボン履かせようよ。・・・(子どもやらない)。ええ?また無視?こちょこちょするぞ・・・そうそう。最初っからやれば良いじゃん。(子どもやる、大人手助けする。)やったー!じゃあ、ご褒美にこちょこちょ!(くすぐる。子ども笑う。)あれ?今度はできたのに、こちょこちょの刑になっちゃった?ごめんごめん。」とこちらのペースに乗せます。まとめると、遊びを楽しく保ちながらも(一緒に遊びたいという動機を保ちながらも)、子どものペースではなくこちらのペースに乗せることが必要なのです。
 行動分析的に見ると、何を強化しているのでしょう?自分ペースの質問(「名前何?」)を一見くすぐりで強化してしまっていますよね。でも、子どもにとっての質問することの本当の強化子は、最初出された指示から逃げることなのです(例えば、ズボンを履かせるための微細運動が苦手で、やりたくない)。この本当の強化子を与えなくて、逆に代わりの強化子(くすぐり)に交代させてしまいます。こうすることで、本当の強化(指示から逃げること)が得られない時の消去のバースト(遊びから逃げ出す、泣くなど)を防ぐことができます。そして指示に従ったことを、またくすぐりで強化するのです。ですから、本当の強化子を失った「名前何?」の行動は頻度が下がりますが、完全にはなくなりません(くすぐる強化があるので)。最初から完全にゼロにしたい行動ではないので、それで良いのです。
 これを繰り返すと、遊びの中で指示に従えるようになり(スキルを教えられるようになり)、徐々にスキルが増えてきます。スキルが増えると、レパートリーが増えるので、次に指示を出された時も(できることが増えているので)、それほど従うのが嫌でなくなります(指示から逃げる動機が減る)。ですから、最初から自分ペースの質問をする動機が少なくなってきます。誰でもできないことを指示されるのは嫌ですよね。だから、できないことをできるように変えていく必要があるのですが、そこをいかに上手に、子どもも楽しみながら練習できるように仕向けることが、上手なセラピーになります。

コメント

このブログの人気の投稿

自閉スペクトラム症と運動

スモール・ステップで勝ち負け、「負けて悔しい」を教える

第3回オンラインABA講座「そんたく」