自閉症の子どもは話せるようになるのでしょうか?

 「私の子どもが自閉症と診断されました。将来話せるようになるのでしょうか?」私の相談室にも時折こういった内容の質問の電話がかかってきます。残念ながら「分かりません。」と答えるしかありません。基本的に自閉症と診断された時点で、何らかの言語の遅れがあると認められた(そうでなければ診断されない)訳ですから、言語の発達に危惧があることは確かです。自閉症と診断される方の中の、会話が完全にできない方もかなりの割合でいるでしょう。ただし私の経験からすれば必ずしも「話せるようにはならない」ということはありません。診断された方の中にも、少数派かもしれませんが将来会話ができるようになる人もおられます。早期の治療教育が功を奏したのかもしれませんし、もともと診断が間違っていたのかもしれません。
 「会話が出来る」と一言で言っても、色々です。片言でしか話せない場合もあれば、すらすら話せる方もいるでしょう。一定の質問にはすぐに答えられても、それ以外の質問やコメントには反応しない又はできないような人もいます。通常の会話はできても、会話に含まれるニュアンスがわからなかったり、文字通り捉えられない冗談や皮肉は分かりづらい方もいます。もちろん言語の難しさは自閉症に限られた訳ではなく、自閉症の診断がなくても、同様の言語の難しさを抱える人もいます。
 診断をされた時点で、「これまで思い描いて来たものとは違う将来になるかもしれない」という覚悟は必要だと思います。ただし、自閉症とは本当に様々な症状が見られるので、千差万別というか、中々「こうである」と言い難いのです。言語のレベルも様々、こだわりの強さも様々、人間関係の構築度合いも様々ということになります。
 さらに言えば、「障害がある」=「何かができない」と考えることは、本人の可能性を否定してしまうことにもつながり、得策ではないかと思われます。パラリンピックに出られるような選手の方は、障害を持ちつつもスポーツを続けておられるかもしれません。両足をなくした方は、もう足を持つことができません。しかし「もう歩けるようにはならない 」「スポーツができない」ということは、必ずしもないのです。「自閉症である」ということは、同じことを何度も繰り返し言うかもしれないし、強いこだわりがあるかもしれません。うまく自分のことが表現出来ないかもしれません。しかしこれは、「将来仕事が持てない」「人を感動させられない」「人を好きになれない」ということではないのです。

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